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東京高等裁判所 平成6年(行コ)34号 判決 1998年3月16日

控訴人

西房美

右訴訟代理人弁護士

三宅弘

近藤卓史

飯田正剛

被控訴人

栃木県知事渡辺文雄

右訴訟代理人弁護士

谷田容一

右指定代理人

津野剛之

外四名

主文

一  原判決中、被控訴人の控訴人に対する昭和六一年一〇月一五日付け昭和六〇年度知事交際費現金出納簿の非開示決定のうち、別表一記載の「相手方が法人その他の団体」欄の二一九件に関する情報が記録されている同出納簿中の部分についてこれを非開示とした部分に関する部分を次のとおり変更する。

1  右非開示とした部分中、別表二の番号一〇、八四、八五、一一四、一三〇、一三七、一四四、一五九、一六九及び一九一の一〇件の情報が記録されている部分に関する部分を取り消す。

2  控訴人のその余の請求を棄却する。

二  訴訟の総費用は、これを二〇分し、その一九を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決中、被控訴人の控訴人に対する昭和六一年一〇月一五日付け昭和六〇年度知事交際費現金出納簿の非開示決定(以下「本件処分」という。)のうち別表一記載の「相手方が法人その他の団体」欄の二一九件に関する情報が記録されている同出納簿中の部分についてこれを非開示とした部分(以下「本件部分」という。)の取消請求を棄却した部分を取り消す。

2  本件処分のうち本件部分を取り消す。

二  被控訴人

本件控訴を棄却する。

第二  本件事案の概要

一  本件処分

1  控訴人は、昭和六一年一〇月一日、栃木県公文書の開示に関する条例(昭和六一年栃木県条例第一号。以下「本件条例」という。)五条一項一号に基づき、本件条例の実施機関である被控訴人に対し、昭和六〇年度の栃木県知事の交際費の金額及び内容を知り得る公文書の開示(閲覧及び写しの交付)を請求したところ、被控訴人は、昭和六一年一〇月一五日、右請求に対応する公文書としては、知事交際費の総額を示す「返納票兼清算票」二通のほか交際費一件ごとの具体的な支出金額及び内容を示す「現金出納簿」一冊(以下「本件文書」という。)がこれに当たるとしたうえ、「返納票兼清算票」二通はこれを開示したが、本件文書については、そこに記録されている情報が公文書の非開示を定めた本件条例六条一号、二号、四号及び五号に該当するとして、これを開示しない旨の本件処分をした。

本件条例六条は、「実施機関は、次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については、公文書の開示をしないことができる。」と定めており、その一号には、「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別され、又は識別され得るもの」(除外規定は省略)、二号には、「法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、公開することにより、当該法人その他の団体又は当該事業を営む個人に不利益を与えることが明らかであると認められるもの」(除外規定は省略)、四号には、「県の機関又は国等の機関が行う審議、検討、調査研究等に関する情報であって、公開することにより、該審議等又は同種の審議等に著しい支障が生ずるおそれのあるもの」、五号には、「県の機関又は国等の機関が行う検査、監査、取締り、争訟、交渉、入札、試験その他の事務に関する情報であって、当該事務の性質上、公開することにより、当該事務若しくは同種の事務の実施の目的が失われ、又はこれらの事務の公正若しくは適切な実施を著しく困難にするおそれがあるもの」が規定されている。

2  本件文書に記録されている知事の交際事務に関する情報は、封筒代、葉書代等に関するものを除き、合計四二二件であり、これを支出項目別、交際の相手方別に分類すると、別表一記載のとおりとなるが、そのうち、交際の相手方が個人であって相手方が識別されるものが一七〇件、識別されないものが三三件であり、また、相手方が法人その他の団体であるものが二一九件である。

二  本件訴訟の経過

1  控訴人は、昭和六二年八月三日、被控訴人に対し、本件処分の取消を求める訴訟を提起し、原審である宇都宮地方裁判所は、平成元年一一月九日、控訴人の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。これに対して、控訴人が控訴を申し立てた。

2  差戻前控訴審である東京高等裁判所は、平成三年一月二一日、原判決を変更し、本件処分のうち、本件部分及び別表一記載の「相手方が個人」欄の「識別されないもの」欄の三三件に関する情報が記録されている本件文書中の部分(以下「個人不識別部分」という。)についてこれを非開示とした部分を取り消し、控訴人のその余の請求を棄却した。これに対し、右請求認容部分につき被控訴人が、右請求棄却部分につき控訴人が、それぞれ上告をした。

3  上告審である最高裁判所第一小法廷は、平成六年一月二七日、控訴人の上告を棄却するとともに(最高裁判所平成三年(行ツ)第六八号)、被控訴訴人の上告(同平成三年(行ツ)第六九号)のうち、個人不識別部分を非開示とした部分を取り消した部分については上告を棄却し、本件部分については、差戻前控訴審判決を取り消し、東京高等裁判所に差し戻した。

したがって、差戻審控訴審である当裁判所における審理の対象は、本件処分のうちの本件部分、すなわち、別表一記載の「相手方が法人その他の団体」欄の二一九件に関する情報が記録されている本件文書中の部分についてこれを非開示とした部分の適否に限られる。

三  本件における争点

1  右上告審判決は、「知事の交際費は、都道府県における行政の円滑な運営を図るため、関係者との懇談や慶弔等の対外的な交際事務を行うのに要する経費である。このような知事の交際は、本件条例六条五号にいう交渉その他の事務に該当すると解されるから、これらの事務に関する情報を記録した文書を開示しないことができるか否かは、これらの情報を公開することにより、知事の交際事務の実施の目的が失われ、又はその公正若しくは適切な実施を著しく困難にするおそれがあるか否かによって決定されることになる。」「知事の交際は、いずれにしても、相手方との信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的として行われるものであるところ、相手方の名称等の公表、披露が当然に予定されているような場合等は別として、相手方を識別し得るような前記文書の開示によって相手方の名称や支出金額が明らかにされることになれば、交際費の支出の要否、内容等は、県の相手方とのかかわり等をしん酌して個別に決定されるという性質を有するものであることから、不満や不快の念を抱く者が出ることが容易に予想される。そのような事態は、交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれがあり、交際それ自体の目的に反し、ひいては交際事務の実施の目的が失われるおそれがあるというべきである。また、これらの交際費の支出の要否やその内容等は、支出権者である知事自身が、個別、具体的な事例ごとに、裁量によって決定すべきものであるところ、交際の相手方や内容等が逐一公開されることとなった場合には、知事においても前記のような事態が生ずることを懸念して、必要な交際費の支出を差し控え、あるいはその支出を画一的にすることを余儀なくされることも考えられ、知事の交際事務の適切な実施を著しく困難にするおそれがあるといわなければならない。」「そうすると、右二一九件の情報が記録されている文書のうち交際の相手方が識別され得るものは、相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど、相手方の名称等を公表することによって前記のようなおそれがあるとは認められないようなものを除き、本件条例六条五号により開示しないことができる文書に該当するというべきである。」としたうえ、「別表一記載の「相手方が法人その他の団体」欄の二一九件の情報について、その相手方が識別されるものであるか否かなどの点を個別、具体的に検討することなく、本件文書におけるこれが記録されている部分を開示しないこととした本件処分をすべて違法とした部分は、本件条例六条五号に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。そうすると、この部分に関する論旨は理由があるので、原判決中この部分は破棄を免れず、以上判示したところに従って、右二一九件の情報が本件条例六条五号に該当するか否かにつき更に審理を尽くさせるため、右部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。」と判示している。

2  裁判所法四条により、当裁判所は、上告審判決の判断に拘束されるので、結局のところ、本件における争点は、本件部分にかかる別表一の「相手方が法人その他の団体」の二一九件の情報について、「交際の相手方が識別されるもの」であるか否か、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど、相手方の名称等を公表することによって前記のようなおそれ(上告審判決の文脈に照らし、交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれ、交際それ自体の目的に反し、ひいては交際事務の実施の目的が失われるおそれ、又は知事の交際事務の適切な実施を著しく困難にするおそれを指すものと解される。以下、これらをまとめて「各種のおそれ」ということがある。)があるとは認められないようなもの」か否かという点を個別、具体的に検討して、本件条例六条五号に該当するといえるか否かにある。

四  争点に対する当事者の主張

1  被控訴人

(一) 主張立証責任について

上告審判決の趣旨によると、本件文書中の当該情報が「相手方が識別されるもの」であることが認められれば、原則として、本件条例六条五号に該当するものであり、その場合でも例外的に、当該情報が「各種のおそれがあるとは認められないもの」であることが認められた場合には、本件条例六条五号に該当しないので、不開示とすることは許されないものと解されるから、被控訴人としては、当該情報が「相手方が識別されるもの」であることを主張立証する必要があるが、「各種のおそれがあるとは認められないもの」であることについては、控訴人に主張立証責任があり、被控訴人としてはこれに反証をするだけで足りるというべきである。以下、この見地に立って述べることにする。

(二) 本件二一九件の情報について、各件ごとの支出の時期、項目及び金額のほか、交際の相手方が推測されない限度で本件文書の適用欄の記載内容を明らかにしたものが別表二である。

そして、交際の相手方が識別されるものか否かについてみると、本件文書の摘要欄に相手方の記載があり、これを見ること自体により当然に相手方が識別されるものが一九一件、摘要欄に相手方の記載はないものの、行事名等の記載があり、一般人が通常入手し得る関連情報と照合することにより相手方が識別されるものが二二件、以上二一三件は交際の相手方が識別されるものであり、これに対し、別表二の番号一三〇、一五九、一六九及び一九一の四件は、摘要欄に相手方の記載はなく、行事名等の記載があるものの、相手方が識別されないものであり、同表の番号八四及び八五の二件は、摘要欄に相手方及び行事名等の記載がなく、相手方が識別されないものである。したがって、右六件については、本件条例六条五号に該当しないといえるが、その余の二一三件については、相手方が識別されるものであるから、「各種のおそれがあるとは認められないようなもの」であるか否か、とりわけ「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」に該当するか否かを検討する必要があり、以下、支出項目の類型別にみることとする。

なお、相手方の名称等の公表、披露とは、相手方の名称や支出金額その他交際内容の公表、披露をいうのであって、交際の相手方の公開性のみを意味するものではない。交際費支出の有無を問わない全般にわたる知事交際事務の公開性と、交際費の支出を伴う交際の相手方及びその金額の公開性とを混同し、前者の意味における公開性が高いとか、その公開性に意義があるというような理由で、後者の公表、披露が予定されているとか、公表、披露が義務づけられているという見解は是認できない。

(三) 御祝(一一三件)及び御見舞(一件)

別表二の支出項目に「御祝」とある一一三件は、知事が各種の式典、祝賀会、大会、会合等に招待され、あるいは各種大会に参加する選手団から出陣の挨拶を受けた場合などに、祝賀、協賛、激励等の趣旨で金銭を贈ったものであり、「御見舞」とある一件は、知事がある事故に関して発生地の地方公共団体に見舞の趣旨で金銭を贈ったものである。

こうした御祝や御見舞の類は、その儀礼としての性質上、贈った知事の側から、どこどこに御祝、御見舞を贈ったなどと公表することはあり得ず、また、贈られた側が、知事から御祝、御見舞をもらったことやその金額を公表することも考えられないところであり、現に右一一四件の中にそのようなものは見当たらない。知事が各種の式典、祝賀会、大会、会合等に出席することが秘密でないからといって、その際に御祝を贈ったとか、いくら贈ったかということが公然となるわけではない。また、御見舞についても、公開性の強いものとはいえず、新聞報道等がされた事実もなく、その金額までが公表、披露されることが予定されていたとは到底いえない。

(四) 生花(九件)

別表二の支出項目に「生花」とある九件のうち、八件は、知事が各種の式典、祝賀会、大会、会合等に招待された場合などに祝賀の趣旨で生花を贈ったものであり、残りの一件は、知事が弔事の主催団体に弔意の趣旨で生花を贈ったものである。

生花については、出席者等の目に触れるのは当然であるが、その贈呈の事実が外部に広く公表、披露されることが予定されていたとはいえないし、これに要した金額が公にされるということも考えられない。すなわち、知事名の生花が当該式典の出席者の目にとまるからといって、知事が出席するなどして交際の対象となした各種式典(御祝とともに生花を贈ったもの、御祝だけのもの、生花だけのもの、御祝も生花もないものなど、様々である。)の主催団体その他の関係者の間に、どの式典等に知事名の生花があったかどうかということが公然となるわけではない。生花を贈るか否かは、県の相手方との関わりなどを考慮して個別に決定されているのであるから、右のような事項が逐一公開された場合には、生花の贈呈を受けなかった知事の交際の相手方等に不満や不快の念を抱く者が出てくることは当然予想されるところであり、知事においても、そのような事態を懸念して生花の贈呈を差し控え、あるいは画一的な対応をすることも考えられる。

また、どの程度の生花を贈るかということは、県の相手方との関わりなどを考慮して個別に決定されているものであるところ、九件の生花を一堂に並べて比較するというならともかく、ある一個の生花を見ただけで、知事の贈る生花にどのようなランクの違いがあり、当該生花がどのランクに属するかなどを知ることは、およそ不可能である。

(五) 広告(二九件)

別表二の支出項目欄に「広告」とある二九件は、知事が当該新聞事業者等との交際として年賀、成人の日、暑中見舞等のいわゆる名刺広告を行ったものである。

右広告は、読者の範囲こそ広狭様々であるものの、その性質上、交際の相手方である新聞事業者等が公になることが予定されているものといえる。しかしながら、このような名刺広告の掲載料は、媒体である新聞等により、また、同じ新聞であってもそれぞれの企画により異なるうえ、具体的な金額は個別的な折衝によって決められるのであるから、その金額までが公表、披露の予定されているものということはできない。右広告は、いずれも新聞事業者等が企画した名刺広告について当該事業者から要請ないし勧誘を受け、県の当該事業者との関わりなどを考慮し儀礼的な交際としてこれに応じているものであり、こうした性格を有する交際費の金額を公開することは、儀礼の趣旨に反するものとして当該交際の相手方である新聞事業者等に不信の念を抱かせ、また、名刺広告類の要請、勧誘に限定的に対応し、掲載料についてもこれを低額に抑えようとして行っている各新聞事業者等との折衝に支障をもたらすことになる。したがって、右金額を公開すると、広告にかかる交際事務の実施の目的が失われ、その適切な実施を著しく困難にするおそれがないということは到底できない。

(六) 賛助(三五件)

別表二の支出項目欄に「賛助」とある三六件(ただし、番号一三〇は、前記の相手方が識別されないものである。)は、知事が民間団体の公共的活動に賛同する趣旨から当該団体に対し儀礼的な寄付を行ったものである。

番号一三〇を除く三五件は、いずれも儀礼的な交際として行った寄付であることの性質上、知事の側から相手方、金額等を公表することはあり得ず、相手方が礼を失するような公表を行うことも考えられないところであり、現に三五件中にそのようなものは見当たらない。

賛助は、民間団体の公共的活動に対するものではあるが、会合等への知事の出席などにみられるような交際事務の公然的外形も伴わないものであり、儀礼的な寄付であるから、公開性はないものである。そして、賛助もまた、御祝、御見舞、生花、広告と同様、県の相手方との関わりなどを考慮し、賛助を行うかどうか、いくら賛助すべきかを個別的に決定しているものであり、その相手方や金額を公開した場合、関係者の間に不満や不快の念を抱く者が出てくるなどして交際事務の実施の目的が失われ、今後における右の決定に支障が生じて交際事務の適切な実施を著しく困難にするおそれがある。

(七) 雑費及び寸志(二六件)

別表二の支出項目欄に「雑費」又は「寸志」とある三一件(ただし、番号八四、八五、一五九、一六九及び一九一の五件は、相手方が識別されないものである。)は、知事がスポーツ行事につき主催団体にカップ等の賞品を提供したもの、関係団体にみやげ、贈答品等を贈ったもの、会合の負担金又は会費として提供したもの、文化財等の視察の際の案内について謝礼の趣旨で金銭を贈ったものなどである。相手方が識別されないものを除く二六件のうち、一五件が賞品等、四件がみやげ等、二件が負担金等、五件が謝礼等である。

賞品等の一五件のうち、番号一〇及び一三七は、「知事杯」を掲げた大規模なゴルフ大会に関するものであり、知事のカップ提供の事実の公表、披露が予定されていたものということができ、また、その金額についても、それ自体の公表が予定されているわけではないが、二つの大会を比較してカップ代の高低が論じられ、その結果関係者が不満、不快等の念を抱くということは通常考えられないから、本件条例六条五号に該当しないといって差し支えない。しかし、その余の一三件は、いずれも当該団体の内輪の行事であり、知事がカップを提供した事実やその金額が世間一般に公表されるようなものではない。

みやげ等の四件、謝礼等の二件は、御祝、御見舞、生花等と同様の性質のものであり、これらと異なる判断をすべき理由は全くない。

負担金等の二件は、当該会合が負担金制、会費制で行われたものであり、その金額が知事の裁量によって決定されたものではない。しかし、当該負担金の支出は、儀礼的な交際の一環としてなされたものであり、知事が金銭を差し出したことが公表、披露を予定してなされたものではない。

(八) 以上の次第であるから、交際の相手方が識別され得る二一三件のうち、別表二の番号一〇及び一三七を除く二一一件については、いずれも本件条例六条五号の事由があるというべきである。

(九) 部分開示について

(1) 本件条例七条は、「実施機関は、前条に規定する公文書に同条各号のいずれかに該当する情報(当該情報が記録されていることによりその記録されている公文書について文書の開示をしないこととされるものに限る。)以外の情報が記録されている部分が含まれている場合において、当該部分を容易に、かつ、公文書の開示の請求の趣旨を失わない程度に分離できるときは、同条の規定にかかわらず、当該部分については開示をしなければならない。」と定めているが、控訴人は、この規定に基づき、次のとおり部分開示を求めている。

(2) まず、控訴人は、本件文書のうち、支出の年月日、項目及び相手方に限定しての部分開示がされるべきである旨主張する。

しかしながら、本件文書については、既に年月日及び金額の部分が開示されており、これに加えて支出項目及び相手方の部分を開示することになると、本件文書の全部を開示するのと同様の結果となるから、右部分開示についても本件条例六条五号の事由があるというべきである。

(3) 次に、控訴人は、本件文書のうち、支出の年月日、項目及び金額に限定しての部分開示がされるべきである旨主張する。

しかしながら、本件文書のうち、支出の年月日、項目及び金額のみの開示から相手方が識別され得るかどうかはともかくとしても、法人等に支出された御祝、御見舞、生花、広告、賛助等の支出項目ごとに個々の金額が開示されることになれば、不信、不満、不快の念を抱く者が出ることは当然に予想され、相手方との信頼関係、友好関係を損なって交際事務の目的が失われるおそれがあり、また、知事が個別、具体的な事例ごとに合理的な裁量判断をしていくことが困難となり、金額等を画一的にすることを余儀なくされるなど、交際事務の適切な実施を著しく困難にするおそれがあるものといわなければならない。したがって、右部分開示についても本件条例六条五号の事由があるものというべきである。

なお、当審における審理の過程において、被控訴人は、本件文書のうち、年月日、支出項目及び金額を明らかにして被控訴人の主張の正当性を根拠づけたが、これは、あくまでも訴訟における主張立証の結果であり、行政処分である本件処分のうちの本件部分の取消請求の問題とは次元を異にするものであるから、右のとおり被控訴人が明らかにしているからといって、右部分の開示が認められるべきであるということにはならない。

2  控訴人

(一) 主張立証責任について

本件条例の情報公開の実施機関である被控訴人は、非開示とするための本件条例六条五号の事由を主張立証する責任を負うことはいうまでもないが、上告審判決の趣旨に照らすと、右非開示事由があるというためには、本件文書中の当該情報が「相手方が識別されるもの」であることのみならず、開示することによって「各種のおそれがある」ことを個別具体的事実として客観的に明白な程度に主張立証する責任を負うというべきである。このような考え方は、本件条例が原則公開の基本理念に基づいて制定されており、その例外事由である六条各号の主張立証責任を実施機関に負わせている趣旨からも導かれるものである。

したがって、相手方が識別されるものであっても、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」、相手方の名称が内密にされるものを除き、相手方の名称等を「公にすること」(行政手続法五条三項、六条参照)が予定されているものはもとより、個別具体的にみて、公開することによって「不満や不快の念を抱く者」が出るわけではなく、各種のおそれがあると客観的に明白な程度にまで認められないものについても、本件条例六条五号に該当しないこととなる。

(二) 被控訴人主張の二一三件の情報全体についてみると、法人その他の団体に関する情報については、本件条例六条二号により「公開することにより、当該法人等に不利益を与えることが明らかであると認められるもの」を非開示とすることができるとされているところ、名刺広告については、差戻前控訴審が本件条例六条二号に該当しないと判示したのに対し、被控訴人は上告理由とせず、その余については、本件条例六条二号に該当する旨の主張はしていない。したがって、法人等において、知事から「御祝」等を受け取ったことが開示されても、法人等にとって「不利益」とはならないのであるから、およそ法人等それ自体が「不満や不快の念を抱く」ことはあり得ない。そして、法人等それ自体にとって「不利益」とならないものについて、法人等の代表者又はこれに準ずる者が「不満や不快の念を抱く」ということも、社会的、経験的事実として明らかではない。

また、本件文書が開示されることにより、自己の所属する法人等の受取額が他の法人等の受取額よりも少ないことを当該法人等の代表者等が知ったとしても、受取額が少ないことは法人等にとって「不利益」とはならないものであるから、当該法人等として「不満や不快の念を抱く」ということが個別具体的かつ客観的に明白であるとはいえない。仮に、受取額が少ないことによって、法人等の代表者やこれに準ずる者が「不満や不快の念を抱く」ことがあったとしても、知事から御祝等を受け取ることは名誉なこと、喜ばしいことであって、少額であることの「不満や不快」よりも、受け取ったことについての名誉心、喜びが上回り、これによって各種のおそれがあることについては個別具体的かつ客観的に明白であるとはいえない。

更に、御祝等を受け取っていない法人等の代表者又はこれに準ずる者が、これを受け取った法人等と比較して「不満や不快の念を抱く」ことがあったとしても、その「不満や不快の念」は、本件文書の開示によるものではない。むしろ、御祝等を渡す知事の行動そのものが、外部に公表、披露され、あるいは公にすることが予定されており、内密にされるという公開禁止措置がとられていないことによるものである。また、右法人等の代表者等が「不満や不快の念」を抱いたとしても、それによって各種のおそれがあることについては個別具体的かつ客観的に明白であるとはいえない。

以下においては、支出項目の類型別に述べることにする。

(三) 御祝

御祝をしたとされる式典、大会等は、いずれも内密の公開禁止措置がとられたものではなく、知事又はその代理者が出席したということがマスコミ報道されることも少なくはなく、栃木県の方から広報することもあり、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」に該当する。しかも、相手方は、公的団体と民間団体を含め、私的な利益追求のためのものではなく、公益追求の団体に限られているから、御祝の金額が開示されても、相手方の代表者等が「不満や不快の念を抱く」ことはなく、公開することにより各種のおそれがあるとはいえない。

また、御祝をしたとされる会合は、知事又は代理者が秘密に出席することはないのであり、公的団体と民間団体を問わず、私的な利益の追求のために行われるものではない。会合の場合の御祝には、会費に代わるものとしてされるものと、祝儀としてされるものとがあるようであるが、祝儀としてされるものは、右式典の場合と同様、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」に該当し、会費に代わるものは、金額も公表されることが予定されているものに該当する。そして、相手方が公益追求のための団体に限られていて、相手方の代表者等が「不満や不快の念を抱く」ことがなく、公開することにより各種のおそれがあるとはいえないことは、式典、大会等の場合と同様である。

(四) 御見舞

このような知事の見舞は、その事実が公開されることによって被災者の励ましにもなるのであり、むしろ本来公開されるべきものである。秘密裡に知事が見舞をしなければならない特段の事情は立証されていない。

相手方である地方公共団体が、見舞を受け取ることにより不平、不満を持つことはない。被控訴人がある地方公共団体に見舞金を渡したことについて、地方公共団体の誰が不平、不満の念を抱くのかについては、社会的経験的事実として全く立証がされておらず、したがって、公開することによって各種のおそれがあるとはいえない。

(五) 生花

生花は、式典、弔事等の出席者の目に触れ、その贈呈が出席者に知られることは予定されていたものであり、現に、式典、弔事等において知事からの贈呈があったことが公表される。そして、生花には価格により二種類があるようであるが、その区別が外観から感知されたとしても、生花を受け取った相手方の代表者等は、名誉なこと、喜ばしいことと思いこそすれ、不満や不快の念を抱き表明することはないのである。

したがって、生花は、その贈呈が不特定又は多数人に公表されるものであって、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」であり、かつ、開示されることにより「不満や不快の念を抱く者が出」ないものであるから、本件条例六条五号に該当しない。

(六) 広告

広告は、いずれも名刺広告であり、当然読者に読まれることを前提とし、相手方である新聞事業者等が公表されることを予定してなされたものである。そして、相手方に支払われる金額は、当該新聞ごとに基準が設けられて定められている広告料であり、具体的に値引きがあるとしても、それは一定の範囲内の具体的な金額にとどまり、およそ新聞事業者等に不満、不快の念を抱かせて今後の掲載料の折衝等に支障をもたらすような事情は認められない。

したがって、広告は、いずれも「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」であり、かつ、開示されることにより「不満や不快の念を抱く者が出」ないのであるから、本件条例六条五号に該当しない。

(七) 賛助

賛助は、民間団体の公共的活動に賛同する趣旨で、当該団体に儀礼的な寄付を行ったというものであるが、右民間団体は、私的な利益追求をするものではなく、もっぱら公共的活動を行うところであり、寄付を行った事実が開示されても、当該団体にとって不利益となるものではない。しかも、低い方の額を寄付した場合も、高い方の額を寄付した場合も、いずれにせよ受け取った団体から不平や不満が表明されたことはないというのであるから、公開によって各種のおそれがあるとはいえない。

また、賛助として公共的活動を行う民間団体に寄付を行うことは、公開禁止措置により内密にされていたものではないから、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」といえる。

したがって、本件条例六条五号に該当しない。

(八) 雑費及び寸志

(1) まず、別表二の番号一〇及び一三七を除くゴルフ大会に提供されたカップについては、当該ゴルフ大会が内輪の行事であるとしても、不特定多数人の目にとまるものであり、また、その開催とカップ贈呈の事実が参加者だけに口止めされるものではなく、他人が見ても不自然でない開かれた形態でされるものであり、また、カップ自体は、市販されているものにすぎず、その種類は見れば分かるという程度のものであるから、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」に当たる。そして、カップを提供したことに関して、当該主催団体その他の者から不平、不満が出たということはなく、また、カップを提供しなかったゴルフ大会の当該主催団体等から、知事のカップの贈呈を受けたいとの申出があったにもかかわらず、これを断ったために不満や不信の念を表明されたことはないというのであるから、公開によって各種のおそれがあるとはいえない。

次に、ゴルフ大会以外の大会の賞品については、どのような種類の大会にどのような賞品を贈呈したのかに関し何らの主張立証もないのであるから、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」に該当しないことは明らかでなく、また、公開によって各種のおそれがあるとはいえないのである。

したがって、いずれについても本件条例七条五号には該当しない。

(2) みやげ等や謝礼等については、それに関わる行事等が内密にはされていないものであり、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど」に該当する。そして、その相手方は、いずれも私的利益追求のための団体等ではなく、しかも、その金額は世間常識並みの程度であるから、相手方の名称や金額が開示されても、「不満や不快の念を抱く者」が出ることはなく、各種のおそれがあるとはいえない。したがって、これらについても本件条例六条五号に該当しない。

(3) 負担金等については、案内状に記載があるものであって周知されているうえ、案内状は広く一般に配布されるものであるから、これに応じて知事が負担金等を支払って当該会合等に行くことにより、会合等を主催する「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」といえる。

また、案内状に負担金等の額が記載された会合に知事が出席することは、不特定又は多数人の周知するところとなるが、これによっても、金額の高低につき不満、不平を受けたことはないというのであり、開示することによって各種のおそれがあるとはいえない。

(九) 部分開示について

被控訴人は、本件条例七条に基づき、主位的には本件文書のうち、支出の年月日、項目及び相手方に限定しての部分開示、予備的には本件文書のうち、年月日、項目及び金額に限定しての部分開示をするべきである。

少なくとも、年月日、項目及び金額に限定しての部分開示であれば、これによって交際の相手方は識別されないのであり、これを非開示とすることは許されない。

第三  当裁判所の判断

一  主張立証責任について

1  本件条例一条は、「この条例は、県民の公文書の開示を求める権利を明らかにするとともに、公文書の開示に関し必要な事項を定めることにより、県民の県政に対する理解を深め、県政への参加を推進し、もって一層公正で開かれた県政の実施に寄与することを目的とする。」と定め、五条は、「県内に住所を有する個人」等は、実施機関に対して、公文書の開示を請求することができると定めて、県民等に公文書開示請求権があることを明らかにしている。他方、六条は、前記のとおり、一号ないし七号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については、これを開示しないことができると定めているが、右非開示事由は個別的、具体的に規定されている。また、七条は、公文書の部分開示について規定し、非開示事由のある情報以外の情報が記録されている部分がある場合において、当該部分を容易に、かつ、公文書の開示請求の趣旨を失わない程度に分離できるときは、当該部分の開示をしなければならないと定めている。このような本件条例の目的、規定内容等に照らすと、本件条例は、原則として県民等に対し公文書の開示請求権があることを保障し、例外的に非開示事由がある場合に限って実施機関が公文書を非開示とすることができることにしたものであることが明らかであるから、右の非開示事由があることについては、実施機関が主張立証する責任を負うものというべきである。

2 これを知事の交際費に関する本件文書についてみるに、知事の交際は、非開示事由を定める本件条例六条五号にいう「交渉その他の事務」に該当するところ、当該情報に関し、同号所定の「当該事務の性質上、公開することにより、当該事務若しくは同種の事務の実施の目的が失われ、又はこれらの事務の公正若しくは適切な実施を著しく困難にするおそれのあるもの」であるというためには、上告審判決の趣旨に照らすと、当該情報にかかる交際が通常の儀礼的交際としてなされたものであり、かつ、その相手方が識別され得るものであることを主張立証すれば足りるというべきである。そして、その主張立証によって、右のような要件があるとされる場合であっても、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど、相手方の名称等を外部に公表することによって前記のようなおそれがあるとは認められないようなもの」であるという例外的に非開示事由がないとされる特別事情が存在しないこと(以下「特別事情の不存在」という。)も同時に推認されるものと解するのが相当である。

したがって、被控訴人は、当該情報にかかる交際が儀礼的交際としてなされたものであること、その相手方が識別され得るものであることを主張立証すとべきであり、それによって同時に右特別事情の不存在も推認されることになるが、控訴人がその推認を動揺せしめたときには、原則に戻って被控訴人は右特別事情の不存在を主張立証しなければならないというべきである。

二  栃木県知事における交際費支出の実際

乙一四、一七、原審証人佐藤誠及び当審証人大柿悦雄によると、次のとおり認められる。

1  栃木県知事の交際費は、一般会計予算の「第二款総務費」、「第一項総務管理費」、「第一目一般管理費」の「第一〇節交際費」の中に計上され執行されるものであり、その中には、年度当初から知事交際費として秘書課が主管・執行したもの(秘書課主管知事交際費)と、県全体の調整財源として財政課が主管していた全庁交際費のうちから知事交際費として秘書課が執行したもの(秘書課執行の全庁交際費)とがあり、昭和六〇年度においては前者が六〇〇万円、後者が三五〇万円、合計九五〇万円が支出された。

交際費の支出については、地方自治法二三二条の五第二項、同法施行令一六一条一項一四号、栃木県会計規則(昭和三九年栃木県規則第一八号。以下「会計規則」という。)六一条七号(昭和六二年改正前は同条八号)に基づき資金前渡の方法が採られている。そして、秘書課秘書係長が資金前渡員となり、概ね四半期ごとに支出予定額の前渡を受け、管理・支出し、会計年度終了後に返納票兼清算票を作成して清算している。

2  栃木県知事は、栃木県の代表者として、その職務執行に関し、広範囲かつ多数の関係者との間で、その友好、信頼、協力等の関係を形成、維持、確保して、県行政の適正かつ円滑な運営を図るため、式典や行事その他の各種会合等への出席、慶弔事案の処理、懇談、接遇、挨拶、その他多岐にわたる交際を行う必要があるが、栃木県においては、知事の交際費の支出基準について、特に訓令等の内部規則の定めはなく、秘書課が個別的、具体的な事例ごとに、先例を参考にしながら、相手方の地位、相手方の県との関わりの濃淡、貢献度の大小などを考慮して、支出の金額を知事に上申し、これを参考にして最終的には知事自身が当該交際の必要性、交際費の支出及び金額を決定する。実際には、秘書課の判断に任せることがほとんどであるが、知事自らが判断を下すこともある。交際の必要性(県行政の執行上有益であるか)、交際費の支出の有無及びその金額については、上記の基準によりある程度は客観的に決せられるが、もともと一義的に決まる性格のものではなく、その判断は、県の行政執行の最高責任者である知事の合理的な裁量に委ねられている。

3  交際費の支出に関しては、金銭出納簿が作成される。これは、資金前渡員である秘書課秘書係長が会計規則一三一条に基づき別紙記載の様式により記帳作成するものである。

昭和六〇年度の知事交際費現金出納簿である本件文書は、前記秘書課主管知事交際費及び秘書課執行の全庁交際費とがそれぞれ各月順に記帳されている。具体的な記載方法としては、まず前渡金収入については、年月日欄に当該収入の月日が、受高欄にその金額が、残高欄にはこれを加えた残高がそれぞれ記載され、次に支出については、年月日欄に当該支出の年月日が、摘要欄には後記の支出項目及び相手方の氏名、職名、法人・団体名等が、払高欄には当該支出の金額が、残高欄にはこれを差し引いた残高がそれぞれ記載されている。本件文書は、月ごとに改頁されており、各月分の初行には前月までの受高、払高の累計額及び残高が記載され、各月分の末尾には受高及び払高の累計額が記帳されたうえ、秘書課長及び課長補佐等の押印がなされている。

三  本件二一九件の情報の概要と相手方識別性の有無について

1  被控訴人により、本件二一九件の情報について、各件ごとの支出の年月日、項目及び金額のほか、交際の相手方が推測されない限度で類型的に相手方の団体の種別等を明らかにしたものが別表二である。

2  そして、被控訴人の主張によると、別表二の番号八四、八五、一三〇、一五九、一六九及び一九一の六件は相手方が識別されないものであるが、摘要欄の相手方の記載により、交際の相手方が識別され得るものが一九一件、摘要欄に相手方の記載はないものの、行事名が記載されており、一般人が通常入手し得る関連情報と照合することによって相手方が識別され得るものが二二件、以上合計二一三件は相手方が識別され得るものであるというのであり、本件文書を分析検討し別表二の作成に当たった当審大柿悦雄の供述は、これを裏付けているものであり、控訴人も、右の主張自体についてはさして疑問を提起していないところであるから、相手方識別性の有無については、被控訴人主張のとおりであると認めるのが相当である。

3 したがって、相手方が識別されない六件については、本件条例六条五号の不開示事由があるとは認められないこととなるが、相手方が識別され得る二一三件については、当該情報にかかる交際が儀礼的交際としてなされたものであるか否か、特別事情が不存在であることの推認を疑わせる事情があるか否かなどについて検討しなければならないので、以下、各支出項目ごとにみることとする。

四  御祝(一一三件)について

1  乙五四、原審証人佐藤誠及び当審証人大柿悦雄によると、御祝一一三件には、本件文書の摘要欄に「式典」(三三件)、「総会」(一三件)、「大会」(七件)と記載されているもののほか、「会合」又は懇親会、懇談会、祝賀会若しくはこれらに類するものと思われる記載がある「会合」(五〇件)、それ以外の行事名の記載がある「行事」(七件)、スポーツ大会への出陣挨拶を受けた際の激励を思わせる「激励」(一件)があり、これらは、いずれも知事が、各種の式典、会合、行事等に招待され、あるいは各種のスポーツ大会に参加する選手団から出陣の挨拶を受けた場合などに、祝賀、協賛、激励等の趣旨で金銭を贈ったものであり、儀礼的交際としてなされたものであることが認められる。

2  そこで、特別事情の不存在について検討するに、控訴人は、まず、右式典等は内密のものではなく、知事の出席がマスコミや栃木県の広報で報道されることも少なくないのであるから、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」に当たる旨主張する。右証拠によると、たしかに式典等への知事の出席がマスコミ報道されることが少なくなかったことが認められるけれども、その際にも知事の御祝の有無、その金額が報道されることはなかったことが認められるから、この御祝にかかる情報につき「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」ということはできない。なお、控訴人は、会合の際の御祝の中には、実質的に会費に代わるものが含まれており、それについては、知事の出席のみならず、金額も公表されることが予定されていたものといえる旨主張するが、右証拠に照らし、会合の際の御祝の中に会費に代わるものが含まれていた事実を認めることはできない。

控訴人は、「御祝」を受けた相手方は、公的団体、私的団体を問わず公益を追求しているものに限られるから、その金額が開示されても、相手方の代表者等が「不満や不快の念を抱く」ことはなく、各種のおそれはない旨主張するけれども、知事の交際費支出の実際は前記二2のとおりであって、「御祝」の有無及び金額が様々であるから、仮に「御祝」が相手方の公益追求の諸活動に対して贈られるものであるとしても、これが開示された場合には、相手方等の中に「不満や不快の念を抱く者が出ること」が容易に予想され、各種のおそれがないとはいい難い。

したがって、開示することによって各種のおそれがあるとは認められないような特別事情も存在していないというべきである。

3 よって、御祝(一一三件)については、本件条例六条五号の不開示事由があるものと認められる。

五  御見舞(一件)について

1 乙五四及び当審証人大柿悦雄によると、御見舞一件(別表の二の番号一五二)は、ある事故に関して、発生地の地方公共団体に見舞の趣旨で贈ったものであって、儀礼的交際としてなされたものであることが認められる。

2 そこで、特別事情の不存在について検討するに、控訴人は、この種の見舞は、その事実が公開されることによって被災者の励ましにもなるのであり、むしろ公開されるべきものである旨主張するが、右証拠によると、知事が右見舞をしたことについては、公開されたことはなく、マスコミ報道されたこともなかったことが認められるのであり、儀礼的交際としての性質、趣旨に照らしても、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」であったとはいえない。

また、控訴人は、この種の見舞に関して、贈呈された地方公共団体はもとより、他の地方公共団体等を含めて、開示することによって「不満や不平の念を抱く者」が出るおそれがあることの立証はない旨主張するけれども、右証拠によると、このような見舞も、御祝等と同様、知事の交際事務の一環として前記二2のような取扱いに従って行われるものであることが認められるところ、栃木県が他の多数の地方公共団体と関わりを持つ中で、特定の地方公共団体に見舞をしたことやその金額が開示されると、当該又は他の地方公共団体の関係者の中に「不平や不満の念を抱く者が出る」ことが予想され(地方公共団体であるといっても、首長らによって運営されているものであるから、他の法人等と比較して「不平や不満を抱く者が出る」おそれは相対的に少ないといえるとしても、程度問題にすぎないものと考えられる。)、したがって、今後、知事が多数の地方公共団体との間で同種の事柄に関して対応を決める場合の裁量に影響がないとは限らない。

したがって、開示することによって各種のおそれがあるとは認められないような特別事情も存在していないというべきである。

3 よって、御見舞(一件)についても、本件条例六条五号の不開示事由があるものと認められる。

六 生花(九件)について

1 乙五四及び当審証人大柿悦雄によると、生花九件のうち八件は、知事が式典等に出席した際に祝儀として贈呈したものであり、残りの一件は、知事がある追悼式に出席した際に弔意の趣旨で贈呈したものであって、いずれも儀礼的交際としてなされたものであることが認められる。

2  そこで、特別事情の不存在について検討するに、控訴人は、生花は式典、弔事等の出席者の目に触れるものであるから、その贈呈が出席者に知られることは予定されていたものであり、右交際は「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」に当たる旨主張する。たしかに、生花はその式典、弔事等に出席している者に触れるものであるから、生花贈呈の事実は、右出席者に知られることが予定されていたものといえ、また、右式典等が新聞やテレビ等で報道され、生花贈呈の事実が明らかにされれば、その読者や視聴者にも知られることとなる。しかしながら、マスコミ報道は、知事の出席等を知らせるものであっても、意図的に生花贈呈の事実までも伝えるものであるとは限らず、むしろ式典等の状況等を報道する中でその一部として伝えられることが多いものと考えられるから、マスコミ報道により生花贈呈の事実が明らかにされることがもともと予定されているものであったということはできない。また、生花贈呈の事実が式典等の出席者に知られることが予定されていたといっても、その出席者は限定されているのであり、本件条例に基づき情報開示を請求し得る一般県民の範囲と比べると、自ずから質的な差異があるというべきであるから、生花贈呈の事実について、本件条例で想定されているような一般県民に対する公表が予定されているものであったとはいえない。加えて、右証拠によると、昭和六〇年当時、知事が贈呈する生花には価格からみて二種類のものがあったところ、もとより、贈呈された生花の価格が公表されることはなかったことが認められ、仮に贈呈された生花を見ればある程度その価格は予想できるとしても、そのように予想できることと事実として公表されることとは異なるものというべきである。したがって、生花贈呈の事実は、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」とはいえない。

また、控訴人は、生花を受け取った相手方の代表者は、二種類ある生花の区別が感知されたとしても、名誉なこと、喜ばしいことと思いこそすれ、「不満や不快の念を抱く」ことはない旨主張するけれども、右証拠によると、前記二2のような知事の交際事務の実際は、生花についてもそのまま妥当するものであり、知事が式典等に出席する場合には、御祝とともに生花を贈呈するもの、御祝のみのもの、生花のみのもの、御祝も生花もないものなど様々であるが、いずれにするかは、県の相手方との関わりなどを考慮して個別に決定されていることが認められるところ、生花の贈呈を受けた相手方は、そのことのみしか知らない場合には、名誉なこと、喜ばしいことと受け止めることが多いとしても、すべての生花の相手方、その金額等が公開された場合には、自らに対する県の対応と比較して「不満や不快の念を抱く者が出ること」が予想され、各種のおそれがないとはいないことは、御祝の場合と何ら異ならないものというべきである。

したがって、開示することによって各種のおそれがあるとは認められないような特別事情も存在していないというべきである。

3 よって生花(九件)についても、本件条例六条五号の不開示事由があるものと認められる。

七  広告(二九件)について

1 乙五四、原審証人佐藤誠及び当審証人大柿悦雄によると、広告二九件は、いずれも年賀、成人祝、暑中見舞、大会出場祝等のいわゆる名刺広告であり、当該新聞事業者等(全国紙又は地方紙の日刊新聞社のほか、その他の新聞、雑誌、通信社等が含まれる。)の勧誘・依頼に応じてしたものであって、儀礼的交際としてなされたものであることが認められる。

2  そこで、特別事情の不存在について検討するに、控訴人は、名刺広告は当然読者に読まれることを前提とし、相手方である新聞事業者等が公表されることを予定してなされたものであり、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」である旨主張する。たしかに、全国紙又は地方紙の日刊新聞に掲載されたものについては、県民一般ともいえる広範な読者に対し、そのことが公表されることを予定してなされたものといえるけれども、右証拠によると、そのような場合であっても、掲載料までが公表されるものではないことが認められる。また、右証拠によると、日刊新聞以外のものについては、広狭の差はあるものの、日刊新聞と比べてかなり対象となる読者が限定されていることが認められるから、名刺広告に応じたことが県民一般に広く公表されることを予定してなされたものであったとはいい難い。

また、控訴人は、相手方に支払われる金額は当該新聞等ごとに基準が設けられて定められている広告料であるから、これが開示されても、基本的に新聞事業者等が不平、不満を持つことはない旨主張する。しかしながら、右証拠によると、栃木県においては、昭和六〇年当時から既に、このような名刺広告についても、前記二2のような知事の交際事務の一環として行われているものであり、新聞事業者等からの勧誘・依頼に対し限定的に対応し、掲載料についてもこれを低額にしてもらうよう折衝していることが認められるのであり、こうした状況の下で、名刺広告の相手方やその金額が開示されると、名刺広告に関する県の自己への対応と比較し、「不満や不快の念を抱く者が出ること」が予想され、県にとっても、今後右のような折衝がしづらくなり、各種のおそれがないとはいえない。

したがって、開示することによって各種のおそれがあるとは認められないような特別事情も存在していないというべきである。

3 よって、広告(二九件)についても、本件条例六条五号の不開示事由があるものと認められる。

八  賛助(三五件)について

1  乙五四及び当審証人大柿悦雄によると、賛助三五件は、いずれも知事が民間団体の公共的活動に賛同する趣旨から当該団体に寄付を行ったものであり、儀礼的交際としてなされたものであることが認められる。

2 そこで、特別事情の不存在について検討するに、控訴人は、賛助をすることは内密にされていたものではないから、「相手方の名称等が公表、披露されることがもともと予定されているもの」とはいえない旨主張するけれども、賛助をすることが内密にする性質のものではないとしても、儀礼的交際としての性質上、公表されるべきものでないことも明らかであり、「相手方の名称等が公表、披露されることがもともと予定されているもの」とはいえない。

控訴人は、賛助を受けた民間団体は、私的な利益追求をするものではないから、開示されても、当該団体に不利益となることはなく、賛助の金額に関しても不平、不満が表明されることはなく、各種のおそれはないと主張するけれども、右証拠によると、昭和六〇年当時、賛助も前記二2のような知事の交際事務の一環として行われていたことが認められるのであり、もしその相手方や金額が開示されると、県の自己に対する対応と比較して「不満や不快の念を抱く者が出ること」が予想され、各種のおそれがないとはいえない。

したがって、開示することによって各種のおそれがあるとは認められないような特別事情も存在していないというべきである。

3 よって、賛助(三五件)についても、本件条例六条五号の不開示事由があるものと認められる。

九  雑費及び寸志(二六件)について

1  賞品等の一五件について

(一)  このうち、別表二の番号一〇及び一三七については、被控訴人自ら本件条例六条五号に該当しないといって差し支えないというのであるから、同号の不開示事由があるものとは認められない。

(二)(1)  その余の一三件についてみると、乙五四及び当審証人大柿悦雄によると、いずれも当該団体の内輪のゴルフ大会に対しカップ等の賞品を贈呈したものであり、儀礼的交際としてなされたものであることが認められる。

(2) そこで、特別事情の不存在について検討するに、控訴人は、右ゴルフ大会が内輪の行事であるとしても、不特定多数人の目にとまるものであり、カップ贈呈の事実も参加者のみに口止めされるものではなく、カップの種類も見れば分かるという程度のものであるから、カップ贈呈の事実及びその金額については「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」どいえる旨主張する。たしかに、生花の場合と同様、カップ贈呈の事実はゴルフ大会の参加者の目に触れるものであるが、その参加者は限定されており、本件条例に基づき情報開示を請求し得る一般県民の範囲と比べると、自ずから質的な差異があるというべきであるから、カップ贈呈の事実について、本件条例で想定されているような一般県民への公表が予定されているものであったとはいえない。また、右証拠によると、贈呈されるカップは市販のものであったが、もとより、贈呈されたカップの価格が公表されることはなかったことが認められ、仮に贈呈されたカップを見ればある程度その価格は予想できるとしても、そのように予想できることと事実として公表されることとは異なるものというべきである。したがって、カップ贈呈の事実は、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているもの」とはいえない。

また、控訴人は、情報を開示することによって各種のおそれは生じないと主張するけれども、右証拠によると、ゴルフ大会へのカップ贈呈も、前記二2の知事の交際事務の一環としてなされているものであり、右と同種のゴルフ大会すべてにカップの贈呈をしているわけではないことが認められるから、もしカップ贈呈に関し相手方やその金額を開示すると、「不満や不快の念を抱く者が出ること」が予想され、各種のおそれがないとはいえない。

したがって、開示することによって各種のおそれがあるとは認められないような特別事情も存在していないというべきである。

(3)  よって賞品等の一三件についても、本件条例六条五号の不開示事由があるものと認められる。

2  みやげ等の四件及び謝礼等の二件について

(一) 乙五四及び当審証人大柿悦雄によると、みやげ等は、知事の手みやげや行事祭事への差し入れであり、謝礼等は、知事が文化財等を視察した際の寺院等に対する謝礼であり、いずれも儀礼的交際としてなされたものと認められる。

(二)  そこで、特別事情の不存在について検討するに、控訴人は、みやげ等に関する行事が内密にはされていないものであるから、「相手方の名称等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど」に当たる旨主張するけれども、右行事が内密にされていないからといって、儀礼的交際としての性質上、公表されるべきものでもなく、相手方にみやげ等を贈呈したことやその金額がもともと公表、披露されることが予定されていたものであるとはいい難い。

また、控訴人は、相手方はいずれも私的利益追求のための団体ではなく、金額も世間常識なみの程度であるから、相手方の名称や金額が開示されても、「不満や不快の念を抱く者が出ること」はなく、各種のおそれがあるとはいえない旨主張するけれども、右証拠によると、みやげ等や謝礼等も前記二2の知事の交際事務の一環としてその取扱いに従ってなされていることが認められるから、御祝の場合と同様、右開示がされると、「不満や不快の念を抱く者が出ること」が予想され、各種のおそれがないとはいえない。

したがって、開示することによって各種のおそれがあるとは認められないような特別事情も存在していないというべきである。

(三) よって、みやげ等の四件及び謝礼等の二件についても、本件条例六条五号の不開示事由があるものと認められる。

3  負担金等の二件について

乙五四及び当審証人大柿悦雄によると、負担金等の二件(別表二の番号一一四及び一四四)は、知事が負担金制、会費制の会合に出席した際にあらかじめ決められていた負担金又は会費として支出したものであることが認められ、その金額が知事の裁量によって決定されたものでないことは被控訴人も自認するところである。

被控訴人は、これも儀礼的交際の一環としてなされたものである旨主張し、乙五四には負担金等が「性質上は御祝に類する」旨の記載があるけれども、仮に右会合が知事が出席せざるを得ないようなものであって、内密のものでもないとすれば、その際の負担金等の支出が儀礼的交際としてなされたものとはいい難いところ、知事が出席したとされる右会合がどのような性質のものであったかについては格別の立証がないから、結局のところ、右負担金等の支出が儀礼的交際としてなされたものと認めることはできない。

また、知事の右会合への出席及び負担金等の支出の事実は公表されることが予定されているものではないとしても、負担金等の支出の有無、金額について知事の裁量が働く余地はないことなどに照らすと、これらの事実が開示されたとしても、知事の交際事務に支障が生じるとは考え難く、各種のおそれがあるとは認め難い。

したがって、負担金等の二件(別表二の番号一一四及び一四四)については、本件条例六条五号の非開示事由があると認めることはできない。

一〇1  以上によると、本件二一九件の情報のうち、別表二の番号八四、八五、一三〇、一五九、一六九及び一九一は、相手方が識別されないために本件条例六条五号の不開示事由があるとは認められないものであり、同番号一〇、一三七、一一四及び一四四は、相手方が識別され得るものであるが、本件条例六条五号の不開示事由があるとは認められないものであるのに対し、以上の一〇件を除く二〇九件は、本件各例六条五号の非開示事由が認められるものである(なお、右一〇件の情報については、本件条例六条二号、四号の各非開示事由の存在も認められない。)。

2  ところで、控訴人は、右非開示事由の認められる二〇九件について、まず、本件文書中の支出の年月日、項目及び相手方に限定しての部分開示を求める。

しかしながら、既に検討したところからすると、右のとおり開示の対象を限定したとしても、いかなる団体にいかなる種類の交際費が支出されたかが明らかとなって、知事の交際事務の一面を窺い知ることができることになるから、とりわけ交際費を受けなかったり、他の団体と比較して少なかったりした法人その他の団体の関係者の中に「不満や不快の念を抱く者が出ること」が予想され、全面開示の場合と同様に、開示することによって各種のおそれがないとはいい難い。

また、甲八〇によると、本件文書中の金額については、控訴人以外の者の請求により、平成六年二月一七日、公文書開示が行われていることが認められるから、右部分開示を認めることは全面開示を認めるに等しい結果をもたらす(右金額開示の事実は、本件処分後の事情であるが、本件処分の適否を判断する際の資料としては考慮し得るものと解される。)。

そうすると、右部分開示請求については、不開示事由の認められる情報以外の情報が記録されている部分が含まれている場合であるとはいえないから、被控訴人がこれに応じる義務はない。

3  次に、控訴人は、右二〇九件について、本件文書中の支出の年月日、項目及び金額に限定しての部分開示を求める。

しかしながら、既に検討したところからすると、右のとおり開示の対象を限定したとしても、支出の項目ごとに金額の多寡が明らかとなるのであり(したがって、その平均額も計算することができる。)、知事の交際の相手方の中には自己への対応と比較して「不満や不快の念を抱く者が出ること」が予想され、やはり全面開示の場合と同様に、開示することによって各種のおそれがないとはいい難い。

したがって、右部分開示請求についても、不開示事由の認められる情報以外の情報が記録されている部分が含まれている場合であるとはいえないから、被控訴人がこれに応じる義務はない。

一一  結論

以上の次第であるから、本件部分のうち、別表二の番号一〇、八四、八五、一一四、一三〇、一三七、一四四、一五九、一六九及び一九一の一〇件の情報が記録されている部分については、違法であって取消を免れないが、その余の情報が記録されている部分については、違法はないというべきであるから、控訴人の請求は棄却されるべきである。

よって、これと結論が一部異なる原判決を変更することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官小野寺規夫 裁判官小池信行 裁判官坂井満)

別表一<省略>

別表二(1)〜(10)<省略>

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